『すずめの戸締り』を観た感想※ネタバレあり

今日公開の新海誠作品『すずめの戸締り』を観てきました。ネタバレありの感想を書きます。とっちらかった、自分のまとめのための感想です。

 

まず、率直におもしろかったよ、とまだ観ていない夫には共有。ただ、それだけでは言い表せないいろんな感情を掻き立たせる作品だった。

 

この映画は3.11の映画であり、当時の記憶がある者としては、あまりにも現実すぎてファンタジーの物語に没入しきれなかった。ただ、この作品のメッセージはそこにあるのかなとも思う。

 

私は被災者ではない。

3.11が起きた当時、繰り返し流される津波地震の映像をテレビ越しに呆然と見つめるしかなかった。次の日から予定があったにも関わらず、寝ることができずに一晩中テレビを見つめていた。あの時に感じた、自然災害への恐怖、自分の(人間の)無力、命やそこにあった生活が無になる瞬間の絶望感。そしてその後何年もかけて被災者の方々の生活や想いをリアルタイムで見てきた

と、言ってもほとんどはテレビの中でである私ですら、終盤すずめが母を探して歩くシーンや、あの映像はあまりにもリアルな現実すぎて、その現実に対して涙がとまらなかった。

決して感動の涙ではない、と、映画館で泣きながら思ってしまった。

 

すずめは作品の中で自分の震災の体験や、母との別れを、「生きていくしかない」「自分を大切にしてくれる人はたくさんいる」という形で消化するのだけれど(大雑把ですみません)、

あの震災によって失われたものがあまりに大きく、その衝撃が未だに蘇ってくる私としては、

そうやって前向きに、純粋に飲み込めるものじゃないよな、、というのが正直な感想だった。

 

もちろん、すずめの感情も、'母の死を乗り越えた'という、あまりにもすっきりとした表現では言い表せないように描かれているし、きっとこれからも釈然としない思いや無力感や後悔を抱えて生きていくはずだ。

 

ただ、ファンタジー要素や恋愛描写でそこまで重くならないようにバランスがとられている影響からか、

なんだか誤魔化されたような気持ちになり、これはハッピーエンドと言えてしまうがそうあってはならない、という私の個人的な意見が邪魔をして、

最高の映画でした!と手放しで喜べるような感想は抱けなかった。

 

 

ただ自然災害や、大切な人との別れに対して、「ここで生きていた人に想いを寄せる」「残された私たちは生きていくしかない」「自然には勝てないけれど1分でも多く存えたい」という気持ちは共感できるものだった。

すずめが旅をしながらたくさんの人の愛に触れることが、このメッセージの説得力をあげる展開もよかった。

だからラストの展開を完全に受け入れはできずとも、すずめ自身がそうやって過去を受け止めて消化したのだ、というところは納得できた。

 

そして、あの震災を知っている世代の私にとってはあまりに残酷な現実を描いているけれど、

今の若い世代にとっては昔の出来事であり、

それは私にとっての第二次世界大戦阪神淡路大震災に当たるんだろうな。

リアルタイム世代じゃなければ、もっとうまく作品としてこれを楽しめるし、ピュアな気持ちで受け止めて納得出来るんだろうなと思う。そして若者はそうやってこれを観て、震災に思いを馳せてくれれば良いと思う。

そしてリアルタイム世代の私たちは、あの現実を思い出して風化させないというところを、もしかしたら新海誠監督は狙っているのかもしれない。

そうだとすれば狙い通りなのだけれど、あまりにもヘビーだった。

感動系ファンタジー作品としてもう一回観よう♪という気軽さは全くなく、もしまた見ることがあるとすれば、私の中ではヘビーな映画を覚悟して観るということになる。

3.11の震災をもろにテーマにするということは、ファンタジーや恋愛要素で明るいには振り切れないんだろうな。

 

叔母さんや芹澤さん、その他度で出会う人々のキャラクターがとても良く、物語のテンポも良かったし、

ファンタジー要素の設定が分かりやすく、話の展開に無理がないのも良かった。

映像は綺麗だし、RADWIMPSのミュージカルみたいになってないのも良かった。

 

トータルの感想としてはおもしろかったけれど、

好みじゃなかった部分としては

・震災の部分が飲み込みきれないということ

・あのネコ!

あの子たちの心理や行動はイマイチ理解出来なかった

・恋愛に結びつけるところはやや強引な気が、、(すずめの行動原理、別に完全な恋愛じゃなくても良くない?いや、恋愛だけじゃないんだろうけど、好きだからなの!?そうなの!?!?好きなの???なんで??ってなってしまった。

たぶん、ソウタを助ける怖いものなさなところも、過去の喪失体験からきてる決心みたいなものだと思うのだけれども、好きだから、みたいに見えてしまうのがなんか残念だった)