引っ越しをします(3年半ぶり5度目

引っ越しをする。ちょっと寂しい。

 

 

子どもができたと分かった時から、早く引っ越したいと言っていたけれど、、いざとなるとやっぱり寂しい。

 

 

この部屋にはいい思い出しかない。

 

ダンボールだらけの部屋で、寂しい気持ちに浸りながら思い返す。

 

遠距離だった彼氏と同棲し、結婚し、子どもが生まれ、、

この部屋に住んだ3年半で、私の人生にとって重要な出来事がたくさんあった。

 

この部屋に住む前「同棲」「結婚」「出産」の言葉を重く感じていて、それを現実にしてしまうのは、なんとなく怖かった。

覚悟はないし、未来設計もなかった。

でも一方でそれを望む自分もいた。

だから全てを通過してここにいる。

 

今となってはどの言葉にも具体的な思い出があり、それが想像していた以上に幸せで、考えるとじんわりと暖かい気持ちになる。

 

 

初めてこの部屋に来た日。

 

少し先に住みはじめていた彼氏が駅まで迎えに来てくれて、部屋まで案内してくれた。こんな大都会に住んだことがなかったから、駅から部屋までのキラキラした看板や人がたくさんいる景色に圧倒されていた。部屋にはまだ家具はほとんどなくて、彼が持ってきた衣装ケースと布団だけがあった。遠距離が終わること、さよならが嫌だった日々が終わることが嬉しくて嬉しくて、、、何もない部屋に幸せな現実と楽しみな未来が見えていた。

 

はじめの数週間は洗濯機がなくて、コインランドリーに通っていた。洗濯を待つ間、彼とコンビニで買った肉まんを食べながら待つ時間が好きだった。

 

彼がウーパールーパーをどうしても欲しがって、家具をそろえるより先に、水槽とウーパールーパーを買った。ウーパールーパーは想像のはるか上を行くアホっぽさで、とっても可愛くて、餌をあげながらずっと眺めていた。

 

何もない部屋で彼がタライを置いて、広々とスペースを使ってスニーカーを洗う日曜の昼間があった。

 

近くに美味しいピザ屋さんを見つけて、何度も通っていたら店員さんと仲良くなった。今まで食べたピザの中で、いちばん美味しいピザだった。

 

私より彼が先に仕事を終えると、いつも駅まで迎えに来てくれていた。みんなが駅に向かって帰宅する中、逆走して帰宅すると、ほんの少しだけ優越感を覚えた。

 

家具を少しずつ買いそろえるたびに模様替えをした。1年で3回くらい大幅な模様替えをして、1年経つころ大きなテレビを買った。それ以来、だいたいの配置が決まった。

 

遠距離恋愛をしていた時。

デートの合間に入った電気屋さんで、大きいテレビが欲しい、彼と一緒に大きなテレビで映画を観たいと言ったら、彼が賛同してくれて、、

あの瞬間から同棲したいと思うようになった。だからテレビを買うのは、私の中でひとつの同棲のゴールだった。

 

大きなテレビ(ついでにスピーカーも)で、何本も映画をみて、アニメを見て、ドラマを見て、スポーツを見た。

 

入籍する前の日は、徹夜してネトフリでバチェラーを見ていた。いつも通りの日曜日に、婚姻届を出しに行った。いつも通り、歩いてアクセサリー屋さんに行ったり、お店をみてまわった。

 

同棲と入籍はたいして変わらなかった。毎日も変わらない。でも私の苗字が変わって、お互いの家族を知った。

 

彼が出張でいない日は寂しかった。ひとりでいる部屋は面白くない。やってることはいつもと同じで、動画を見たらケータイをいじって過ごしていたけれど、彼がいないだけで退屈で無駄な時間に感じてしまう。

 

夏がくるとウーパールーパーの水槽がいつも濁って、彼と相談しながら何度も対策を打って、そうこうしているうちに水槽がどでかくなった。ウーパールーパーは大きくなってもポンコツでかわいかった。

 

彼が大切なTシャツを洗ってプリントがとれてしまった日、私は涙を流して笑い、彼は悲しみで涙を流す寸前だった。

 

少しずつスニーカーや靴が増えていき、その度に私は苦い顔をしたけれど、彼がとても楽しそうにそれを身につけ、それについて語る姿はとても好きだった。

 

毎日毎日、子どもが生まれるまではほとんど毎日、一緒にお風呂に入った。

 

彼が髪を伸ばし始め、いつしか私より長くなった。

 

子どもが出来たとわかった日、彼はアルコールに逃げた。酔っぱらう彼を愛おしいと思った。私も、子供を持つ覚悟なんて決まらなかった。でも嬉しかった。母親になりたかった。父親になった彼を見てみたかった。

 

悪阻の中、彼はとても優しかった。

 

いまだに思う。妊娠は一人じゃなかった。

悪阻で気持ち悪くて毎晩嗚咽していたことも、大きくなるお腹で寝苦しかったことも、少し歩くだけで息切れしていたことも、働くのが大変だったことも、そして出産も、知っているのは私と彼だけだ。妊娠した瞬間から、彼が私と私のお腹を気遣ってくれた日から、2人で子育てをしていると思う。

 

彼が寝言で私のお腹を心配し、寝ながらもお腹を撫でてくれた夜は、嬉しくて泣きそうになった。

 

ウーパールーパーが死んじゃって泣いた日があった。

どうしてあげることもできなかった。

その日は雨が降っていたけれど、彼が一緒にウーパールーパーを土に埋めに行ってくれた。この部屋に最初から一緒にいたウーパールーパー。毎朝声をかけて家を出ていた。ウーパールーパーがいたおかげで、癒された日があって、笑った日があった。

 

悲しみが全くはれないうちに、彼がリュックに亀を入れて帰ってきた。声を出して驚いた。

今は亀が家族になった。

 

出産の日が近づくにつれ、彼を好きな気持ちが大きくなっていった。こんなに人を好きになれるんだと思った。幸せで怖くなった。手を繋いで寝たいのに、お腹が苦しいことが恨まれた。

 

陣痛が来た日。彼はずっと励ましてくれていた。私よりもそわそわしながら、手を握ってくれていた。何の迷いもなく仕事を休んで付き添ってくれた。

 

子供を生んで、退院した日。

早く退院したかったので、家に帰れた嬉しさで泣いた。彼が子供を愛でる姿が愛おしいすぎて泣いた。ありがとうと何度彼に伝えても足りないと思った。

 

里帰りをして再びこの部屋に戻って、一緒に子育てをした。

彼は子供を毎日愛でて、私と一緒にオムツをかえたりお風呂に入れたりしてくれた。

妊娠の時と同じ。

子どもが初めて声を出して笑った日や、手を見つけた日を知っているのは、私と彼だけだ。こうやって一緒に親になっていく。

 

この部屋には楽しくて幸せな毎日があった。

もしかしたら、この部屋で過ごした3年半が、人生でいちばん幸せな日々だったと思うかもしれない。

 

それくらい、幸せな思い出ばかりだ。

 

悲しいことも、ケンカもあったけど、でも思い出は幸福感に溢れている。

 

引っ越しをするのは寂しい。

 

過去を思い返すと、引っ越してきたどの部屋にいた自分も別人のような感じがする。

部屋が変わると生活の景色が変わってしまう。記憶は思い出になって、非現実的なものになってしまう気がする。遠い昔の夢のような出来事になってしまうような気がする。

 

だから少し寂しい。

 

 

でも引っ越しても、今までと同じく彼がいて、亀がいて、子供がいる。

 

場所は変わるけど、家族はかわらない。

それが希望だ。

 

毎日を過ごすことで、日々を重ねることで、いつの間にか人生の中の大事なイベントといわれるモノたちをクリアしてきた。

 

目の前の現実を楽しく、家族を大切に、、そんな毎日を送っているうちに、また幸せな思い出を増やしていけたらいいなーと思う。